クロード・ドビュッシー(1862-1918)は、「牧神の午後への前奏曲」「月の光」など音の世界に革命を起こした超有名作曲家の一人である。
ドビュッシーといえばピアノ曲が有名ですが、歌曲も素晴らしい。
文学にも造詣の深かったドビュッシーはヴェルレーヌ、マラルメなど多くの作家に影響を受け歌曲、オペラの作品に積極的に取り組んだ。
ピエール・ルイス(1870-1925)は少し異端な作家であるが、その変態的ではあるが美しい文章に魅了され邦訳本も多く出された。
ドビュッシーは、ピエール・ルイスの「ビリティスの歌」というギリシャを題材とする散文詩に3度も作曲した。紀元前のビリティスという女流作家が書いた詩をルイスが仏訳した。というスタイルをとった。あまりにもうまく作りこまれていたため多くの学者が騙されたという。
その散文詩は146にも及び、1,パンフィリー(ビリティス少女時代)2,ミュテレネ(レスボス島での同性愛時代)3,キュプロス島(遊女時代)と3つに分かれ、ビリティスの一生をつづったものである。
当時のモラルからはだいぶ逸脱したもので(現在からも?)表立って世に出しにくかった題材である。ドビュッシー自身もその作品には尊敬の念を持っていたものの、ルイスのモラル感にはついていけなかったようである。
1989年 「ビリティスの歌」ソプラノとピアノのための歌曲を発表。1,パンの笛 2,髪 3,ナイアードの墓。 以下パンの笛より一部
あの人はあたしにパンの笛をくれたの きれいに切りそろえた葦を
白いロウでくっつけてあって あたしの唇にはハチミツのように甘いのよ
あの人は吹き方を教えてくれた、あたしを膝の上に乗せて あたしはちょっと震えてたわ
あの人はやさしく吹いたの、あたしが吹いたあとで ほとんどあたしには聞こえないくらいに
官能的な詩に場の感情を揺さぶる音楽。ぞくぞくします。
1900年 パントマイムと詩の朗読のための劇音楽 「ビリティスの歌」 フルート2、ハープ2、チェレスタ。ビリティスより12曲を発表。公にはならず、内輪のサロンで楽しまれたようです。
1914年 「6つの古代墓碑銘」ピアノ4手連弾 1900年に作ったものの中から6曲を抜粋。後にアンセルメによりオーケストレーションされる。レンスキによるフルート、ピアノバージョンもある。
- 夏の風の神、パンに祈るために(Pour invoquer Pan, dieu du vent d’été)
- 無名の墓のために(Pour un tombeau sans nom)
- 夜が幸いであるために(Pour que la nuit soit propice)
- クロタルを持つ舞姫のために(Pour la danseuse aux crotales)
- エジプト女のために(Pour l’Égyptienne)
- 朝の雨に感謝するために(Pour remercier la pluie au matin)
背景を知らずに音楽だけ聴いてるといまいちピンとこないですが詩を読みながら想像力をたくましくすると本当にぞくぞくする音楽です。手前味噌ですが。。
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